シティーハンター感想・危険な国から来た女!
シティーハンター原作版の感想です。少々辛口のところもあるかもしれません。
エピソード12・危険な国から来た女!(JC7巻・第56話〜61話)
母国の内乱から流れてきた少年とその女家庭教師。互いを守ろうとする二人の姿に、獠は!?
(シティーハンタージャンプより引用)
読んで思ったんですが、ヒロインは温子先生だけど、実質的ヒロインは香ちゃんですね。
まぁ、シティーハンターはだいたいそうだし、そうでないと読んでいてもイマイチ乗れないんですけどね。
冒頭、依頼についてのやり取りですが、何気に前の話をひきずっているやり取りがあるのが北条先生の律儀さかなと思います。
(獠の「渚との結婚騒ぎで おれに女の依頼は回さないつもりだな!?」という台詞と、「またすぐやきもち焼いて」という台詞)
しかし、「またすぐやきもちやいて おれは結婚の相手はきみしかいないと思ってるよ」って後半考えるとすごい台詞ですねー。っていうかこんなこと軽いノリで言ってたのが信じられない。初期の獠は軽すぎて、後半から考えると別人ですね。何度も思うけど。
この二人の変化というか成長っぷりを楽しめるのがシティーハンターなんですよねー。
今回獠のアクション的な見所はそんなにありません。序盤のアクション、獠が依頼人に会う時に遭遇するアクションは温子先生の気の強さ、芯の強さが見せ場と思うし、色々あっての終盤、エマリアの追っ手を追い払うアクションは、香ちゃんの銃の腕と拓也くんの銃が見所だと思うのです。アクション場面を獠のチート描写だけでなく、人間描写に絡めているのが素晴らしいと思います。
この話の温子先生はシティーハンターでは珍しいキャラクターです。金目的で拓也くんの家庭教師になったけど、拓也くんの真摯さに打たれて真剣に守ろうとする……すれていた過去を持つ人間がヒロインというのが、非常に珍しいと思います(読解不足かしら)。
拓也くんが獠の真似をし、銃の練習からスケベの真似まで色々してみるが敵わないと悟る、というくだりも非常に興味深いです。こうして考えると獠は男の理想ってことなんでしょうね。しかしハードボイルドな獠はジャンプ誌上であまり支持されず、スケベなもっこり獠になって人気が上がるのが不思議なところです。やっぱり人間ギャップがある方が楽しめるのかなー。
しかしこの回の注目すべき点は、なんといっても香ちゃんとの絡みです。この後もずーーっと続く「香にもっこりしない理由」が拓也によって語られ、さらに口説こうとするエピソードまで追加。ここでくっついてたらシティーハンターはどうなってたんでしょうね。獠が布団で簀巻きにされるのもこの回が多分最初。香ちゃんの一番の見せ場は終盤です。温子先生を獠が口説いたのを立ち聞きし、謝る拓也に香ちゃんはこう言います。
「な なーに あたしが獠を死なせやしないよ」
なにこのいい女って感じです。
っていうか香ちゃんのポジションってすごいですよね。「死なせやしないよ」っていうのは獠を守る、そのために戦うって意思表示ですからね……。
「男にとって女は二種類、一緒に戦う女と守ってやる女」というのをどこかで聞いたけど、この時点ではそれぞれ香ちゃんとヒロインに振られていると思います。やがてそれを香ちゃんひとりでやるようになるんですけど、そうなるとゲストヒロインの影がますます薄くなるんですよね……。
香ちゃんが女性に受けが良いのも非常によく分かります。このエピソードひとつ取っても、(「好きな男の為に戦う女」っていう話ですが)かっこよさと健気さが同居しています。ましてやヒーローの隣に同格としているわけなので(ハンマーによる制裁は、その瞬間獠よりも立場が上だと読者には思えます)女性が感情移入しやすいと思うんですよね。