日暮日記

日々思う事を書いていきます。

シティーハンター感想・恐怖のエンジェルダスト

シティーハンター原作版の感想です。少々辛口のところもあるかもしれません。

 

エピソード4・恐怖のエンジェルダスト

恐るべき麻薬組織の協力要請を拒んだ槇村が、殺害された。獠は兄の死を妹の香に告げ……。

シティーハンタージャンプより引用)

 

この話の最も印象的な場面は槇村の死でしょう。シリーズが続いて獠と香の個人的な話にスポットが当たれば当たるほど、獠の親友であり香の兄である槇村は無視できない存在になっていくのは当然だと思います。シャーロック・ホームズで兄のマイクロフトが登場回数が増えたようなものです。槇村は設定も退場の仕方も影があるので、それがシティーハンターという物語に深みを与えていると思います。

北条先生の大きなテーマの「血縁関係のない家族」がここで登場していますが、それもシティーハンターにプラスの効果が出ていると思います。

この話の冴羽獠には陽気な暗さがあります。ディーラー殺し、上納金強奪はそのピークでしょう。笑いながらディーラーを毒殺するところはほんとに良かったです。シティーハンターが界隈で恐れられているのは、技量だけではなくその冷酷さ、残酷さではないかと思わされます。香ちゃんの扱いも容赦がありません。「女とは思わない」って書いてありますけど、出会いの時と同じく将来獠自身が後悔するんじゃないかってくらいの仕事を振っています。そのくせ「かーわいい」とか添い寝してやろうかとかちょっとしたやさしさをちらちら見せるんですよね(このやさしさも後々変わっていくんですが)。

この陽気な暗さ、冷静さは、今思えば時代性だった気もします。執筆のリアルタイム時はバブル絶頂期でしたが、東西冷戦下で核実験も今の比ではなく、ノストラダムスの大預言が大流行し、世紀末の暗さが世間をおおっていました。第三次世界大戦、などという言葉も飛び交っていました。この話の冴羽獠は、まさにその時代を感じさせるヒーローだったのではないでしょうか。

余談ですが、香が登場時時間にルーズだったこと、獠がユニオンに乗り込んだ時着ていたのが槇村のコートだったことに今更気がつきました。北条先生に申し訳ない……。でもあのコートどうやって脱がせたんだろう……。